馬の去勢の実例です。
馬の去勢はおもに夏以外に実施します。化膿や虫の影響を避けるためです。
発情行動が目立つようになってきたので去勢することにしました。
この子の場合、2歳3か月でした。
普段から陰嚢に触れられるように毎日調教しておきます。
また事前に睾丸がふたつとも触れることを確認しておきます。
鎮静剤投与後に全身麻酔プロポで馬が怪我をしないように気をつけながら倒馬します。
時間経過の計測が大切です。
頭の下にマットを敷きます。
また光の刺激を減少させるために頭にタオルをかけます。
後肢のつなぎに調馬索をかけ、引いて保持します。
術者とのチームワークが必要です。責任重大。
手術部位をよく消毒し、局所麻酔をします。
正中を一個所切皮して薄膜等の周囲組織から睾丸を剥離して露出します。
今回は挫滅法ではなくヘンダーソン去勢術式で片方ずつ処置していきます。
馬の代謝が良いせいか二個目のときに反応して動いたので麻酔を追加しました。プロポはパドリングすることが多いとのことで実際そうなりました。
傷口は解放したまま消毒や抗生剤投与を行い、15分ほどで処置が終わりました。
肢の調馬索と無口の引き手を外します。
起立介助すると無理をする場合があるので、麻酔の効果が解けて自力で起立するまで静かに待ちます。
45分程経過したところでもぞもぞと動き始め、ゆっくりと立ち上がりました。
ボーっとしながらも近づいてきてくれました。
ゆっくりと慎重に厩舎に戻します。
飼料給与は通常と変わらず、1週間程度引き馬のみとします。
※腹圧のかかることは絶対に避けます。48時間は特に要注意。
次の日から抗生剤を朝夕筋注5日間、痛み止め錠剤を飼料混合で経口投与5日間行います。(当日分は術中投与済み)
傷口は流水で洗浄のうえイソジンで消毒を朝夕行います。
馬房を清潔に保つためおが粉は毎日全部取り換えて、傷の腫れ具合を見ながら引馬量を調整します。
個体によりますが体内のホルモン濃度がじょじょに低下することでおよそ4~8週程度で牡馬特有の行動が落ち着いてくるそうです。
当日夕方の様子。
去勢手術後、次の日の様子。
傷口が先に閉じてしまい内部で化膿しないように、傷口は開放創としておきます。
去勢後二日目の様子。
三日目。
四日目。
四日目、後ろから。
五日目。
出血がほぼ止まり肢に血痕が付着しなくなりました。
七日目、元気です。
八日目。
傷口の赤みがとれて白くなりました。
外への出血や浸出液漏出がなくなったことで内部に貯留し腫れが出てきました。
九日目。昨日よりは腫れが治まりました。
10日目。傷口や腫れが若干小さくなりました。
11日目。次第に腫れの下垂が小さくなってきているのがわかります。
13日目。順調のようです。
15日目。
15日目。
後ろから。
傷口はかなり小さくなりました。
16日目。
ほぼ腫れは引いたように感じます。
17日目。
17日目。
後ろから。
内部からしっかり埋まってきたようです。
18日目。
安定しているようです。
18日目。
傷口内部表面が乾いてきているようです。
腫れはすっかり治まりました。
20日目。
21日目。
22日目。
23日目。
24日目。
25日目。
31日目。
あと少しかな。
34日目。
傷口も腫れもだいぶ変化したように感じます。
54日後。
54日後。
以上馬の去勢の様子と経過観察でした。
放牧に復帰しました!
速い速い!
元気そう!
ピカピカ!
ただいま、おかえり~。